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M&A業界が年収ランキングに常駐する理由と業界の将来性
「M&A業界への転職を考えているけれど、実態や将来性がよくわからない…」
そういった疑問を持たれている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、現役M&Aブティックファームに勤務する筆者が「M&A業界の企業が年収ランキングに常駐する理由」と「業界の将来性」を解説します。

そもそもM&Aとは?
M&Aとは「Mergers(合併)& Acquisitions(買収)」の略称であり、「合併と買収」を意味します。
複数以上の会社が一つに統合(合併)することや、会社が事業会社・ファンド等によって買われること(買収)を表す言葉でもあります。
買手は「事業を拡大したい」「工場・専門性の高い人材を取得し市場に高速でアクセスしたい」「買収した企業とのシナジー効果を生み出したい」といった意図。
売手は「承継先を見つけ、事業を存続したい」「ノンコア事業を切り離したい」「まとまったキャッシュを手に入れたい」といった意図をもってM&Aを行います。
企業の売買は数億~数千億円といったお金が動き、取引には複数の専門家が関わります。
取引成立までトラブルが多く、常に何がおこるかわからないエキサイティングなビジネスと言えるでしょう。
M&A業界が年収ランキング上位に常駐する理由
M&A業界は年収ランキングで常にトップに位置し、東洋経済で掲載された年収ランキング1位のM&A会社は平均年収2478万、生涯年収10億7394万円を記録しました。
会社によって大きなブレはなく、プレーヤーで一定上の成果を出すことさえ出来れば年収はグンっと跳ね上がる仕組みです。
いったい、どういったカラクリで高年収が成り立っているのか。
詳しくM&Aというビジネスを紐解いていきましょう。
①高収益なビジネスモデルだから
M&Aというビジネスは会社を買いたい「買手」、会社を売りたい「売手」によって行われる会社の売買をサポートすることでフィー(手数料)をもらう仕組みです。
手数料は動く金額によって左右され、案件の大きさによっては1件で数億の売上を叩き出すことも可能な世界になっています。
また有能なビジネスパーソンさえいればオフィス・パソコン・DM類・電話だけで成立させることができるビジネスのため、人件費以外の経費もほぼかかりません。
とある上場M&A仲介会社の売上高営業利益率は40%を突破。驚異的な数値です。
高収益を叩き出すビジネスモデルにより、社員に還元できるお金が会社にプールされることになります。
②実働人数が少なくて済むから
取引規模にもよりますが、数十億前半の案件でしたら数人でクローズまでもっていくことができます。
M&Aの手数料を決める際にはレーマン方式という式が使われ、取引額が20億円の場合は7,500万円程の手数料がM&A会社に入ってきます。
仮に二人で取引を成立させた場合、一人あたり3,500万円の売上を叩き出す計算になりますね。
結果として、一人あたりの売上高が他業種よりも数段階跳ね上がります。
③案件担当者へのリターンが大きいから
一人あたりの売上高が高まった結果、案件担当者へのボーナスに色濃く反映されます。
M&A会社は商品を売っているわけではなく「M&Aを実行するためのサービス」を売っているため、商品原価はかかりません。
人件費以外の利益を圧迫するような経費はなく、他業種に比べてダイレクトに売上がボーナスに反映されます。
案件を複数決めることが出来れば、サラリーマンでありながら年収数千万円が見えてくるといっても過言ではありません。
高収益・人件費がかからない・案件担当者へのリターンが大きい。
この三要素がM&A業界が年収ランキングで常駐できる主な理由と言えるでしょう。
M&A業界の将来性は?
M&A業界は今後も中長期的に需要が高まり続ける業界だといえます。
この章ではM&A業界の需要が高まっていく理由を「事業承継」と「ベンチャー企業による出口戦略」という2面から解説していきます。
①経営者が抱える事業承継問題
2017年、経済産業省と中小企業庁が出した試算では、高齢経営者の後継者不足によって2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用が失われるという結果が出ました。
2015年時点での中小企業経営者の年齢ボリュームゾーンは60大半ば。
2025年に突入すると多くの経営者が体力・気力に陰りを見せる70代に食い込みます。
東京商工会議所のアンケート調査によると、約50%の経営者が後継者を決めていないとのこと。
少子高齢化が進む日本では、親族内での事業承継もどんどん厳しくなっていきます。
高齢経営者による事業承継のためのM&Aニーズは、増え続けることはあったとしても減ることはないでしょう。
②ベンチャーによる出口戦略としてのM&A
株式会社を設立したのならば、多くのベンチャー企業家はIPO(Initial Public Offering)という上場による出口戦略を考えます。
ですが、IPOは社内を何年もかけて整理する必要がある上にヒト・モノ・カネといった資源を投入し続けないといけません。
上場には条件があり、しっかりとクリアできる企業ばかりではないのが現状です。
何年も企業を運営したものの、上場が実現できず出口に困るベンチャー経営者は年々増え続けています。
そのようなベンチャー経営者にとってM&Aはまとまったキャッシュを得られる出口戦略の一つで、ニーズが十分にあると考えられるでしょう。
上場できる企業は絞られるため、会社が設立される程ベンチャー企業によるM&Aニーズは高まっていくのではないでしょうか。
以上の2点から、M&Aの需要は高まり続けていくことが予想されるでしょう。
コロナ環境下におけるM&A業界の動向
M&A業界は、コロナ環境下の短期的な目線で見ても需要が高まっています。
新型コロナウイルスの影響によって、ホテル・旅行・飲食業等は甚大なダメージを受けました。
前年度比-50%程度で済めば良い方で、帝国データバンクの調査によると2020年7月8日時点で322社がコロナウイルスの影響で倒産しています。
経済全体に深いダメージが残るものの、M&A業界自体の需要が高まりを見せる理由を「M&A取引件数の推移」「ファンド乱立」の2点から解説します。
①年間のM&A取引件数からみる業界の流れ
コロナの影響によりM&A件数は落ち込み、2020年4月には250件を下回る結果となりました。
レコフM&Aデータベースのデータから2019年6月~2020年6月のM&A件数を抽出。平均すると336件/月なので数字だけ見ると低い水準といえるでしょう。
とはいえ、2020年6月にM&A件数は回復を見せております。
コロナの影響によって弱まったホテル・飲食業界等を同業他社やファンドが買収している流れがあるのでしょう。
また事業譲渡の件数も2020年5月から6月にかけて増加しており、事業会社の企業再編ニーズ(ノンコア事業の切り出しニーズ)も見て取れます。
買収ニーズと売却ニーズは依然としてあるので、短期的に見てもM&A業界の需要は高いと言えるでしょう。
②ファンドの乱立からみるM&A業界
買収件数増加の背景に、国・事業会社・投資ファンドによるファンドの乱立があると考えられます。
経済産業省・中小企業庁により「中小企業経営力強化支援ファンド」が設立。
コロナウイルスによる経済的なダメージを受けた中小企業への投資を目的に作られました。
国だけでなくアドバンテッジ・パートナーズやリサ・パートナーズ等、PEファンドによるコロナの影響によって弱った企業を救済しようというファンドが立ち上げられています。
2020年6月には、SBIホールディングス株式会社は「SBI地域事業承継ファンド」を事業承継に悩む中小企業への投資を目的に設立。
約30社の金融機関、投資家による出資を受け100億円を超える形で募集を完了。事業承継への問題意識と買収意欲が色濃く出た案件になりました
いまもなお事業承継・事業存続に悩む経営者は増え続け、国・事業会社・ファンドにより問題解決に向けたファンドが立ち上がっています。
このような事例から、短期的に見てもM&A業界の需要は伸びていくものと予想されます。
まとめ
以上がM&A業界が常に年収ランキングで常駐する理由と、業界の将来性についてでした。
M&A業界は非常に高収益なビジネスモデルが確立され、中長期的に需要の高まりが予想される魅力的な業界です。
反面、年功序列の給与形態ではないため、結果が出なければ生活が厳しくなり辞めるしかない状態に追い込まれます。
資格が不要な反面、税務・法務・会計といった幅広い知識も求められます。M&Aはビジネスの総合格闘技と呼ばれるように、広範囲に深く知識を学び続ける必要があります。
クライアントファーストのため、案件が稼働している際は土日出勤、深夜労働も覚悟しなければいけません。
モーレツに働くことの出来る年齢も限られるため、一生続けていく仕事にするのも難しいでしょう。
ですが、大きなリターンがあるのも事実です。
事業会社で数十年かけて上げるはずの年収を1年でゴボウ抜きにすることも可能ですし、案件を獲得すればサラリーマンでありながら確定申告することになります。
キャリアは広がり、人材としての希少性も向上するでしょう。
実績を出せば今後の転職で困ることもなくなり、ほんとうの意味での「安定」を手にすることも可能です。
M&A業界の大手であるストライクが2022年には現在の1.5倍まで採用予定を打ち出していることから、M&A人材の採用は活性化していきます。
あなたがM&A業界への転職を考えているなら、今がチャンスと言えるでしょう。
同業界でお会いできることを楽しみにしております。