これから仕事を辞める方必見!退職にかかわる法律を徹底解説
転職先が決まって、現職の会社をそろそろ退職したいのですが、退職するときに必要な手続きが分からない方はたくさんいるでしょう。
現職の会社に退職のことを切り出したら、そのまま認めてくれる会社もいれば、なかなか退職させてくれない会社もあります。
実は退職について、様々な法的な定めがあります。
これらの法的ルールを退職前に頭に入れておけば、万が一の時にも安心できるでしょう。
今回は、退職にかかわる法的ルールを解説していきます。
退職にかかわる法的手続きとは?
会社で働くということは、ほとんどの場合は会社と労働契約を結んで、自分の労務を提供する代わりに、会社からお給料をもらうということを意味しています。
そのため、退職は法律定義上、会社との労働契約を解約することを意味していおり、当然といえば当然ですが、契約解除にかかわる諸手続きを行わなければなりません。
それでは、具体的にどのような手続きがあるかについて、詳しく説明していきます。
民法で定められた退職手続き
日本国憲法18条は、
「何人も、いかなる奴隷的拘束を受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いて、その意に反する苦役に服させられない。」
と定めています。
そのため、退職したい人を退職させてくれない会社は、極端的にいえば憲法違反といってもよいでしょう。
その憲法の精神に因んで、民法は労働契約の解除に関する規定があって、それは会社と結んでいる労働契約の期間の定めのあるかないかによって、変わってきます。
これからケース別に解説していきます。
期間の定めのない労働契約の場合
期間の定めのない労働契約というのは、俗にいう「正社員」として働くことです。
正社員はよほどの事情がない限り、会社でずっと働くことが可能ですが、もちろん自分の意思で自由に退職することもできます。
期間の定めのない労働契約の解除に関しては、民法はこう定めています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)」
つまり、労働者は退職の二週間までに、会社に対して退職したい旨を伝えれば、一方的に労働契約の解除ができるわけです。
さらに、サラリーマンのほとんどは月給でお給料をもらっているでしょうが、一部の管理職や高度なプロフェショナルは年俸でお給料をもらっています。
そんな月給制、年俸制に関しては、民法は以下のように規定しています。
「期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以降についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。(民法627条2項)」
なんか分かりにくい感じですね。
これは要するに、月給制や年俸制の場合は、その期間の前半までに退職を申入れると、その期間の満了をもって退職することは可能です。
例えば、8月いっぱいで退職したい場合は、遅くでも8月15日までに会社に対して退職したい旨を伝えれば、8月いっぱいで退職可能です。
また、年俸制に関しては、3ヶ月までに退職を申し入れなければなりません。
ほとんどのサラリーマンは日給制、月給制のため、民法上では2週間前に会社に退職する旨を伝えれば無難と覚えておいてください。
期間の定めのある労働契約の場合
正社員とは違って、アルバイトや契約社員、派遣社員の場合は、基本的に労働契約書に「○○年○○月○○日まで」というような労働期間に関する制限があります。
このような労働契約に関しては、民法は以下のように定めています。
「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手側に対して損害賠償の責任を負う。(民法628条)」
つまり、やむ得ない事情(風水害のような天災や会社の倒産など)がない限り、労働者が契約途中で退職するができませんが、逆にいえば会社も契約途中で労働者を辞めさせることもできません。
それは本来、雇用の不安定な有期雇用労働者を守るための定めですが、その代わりに労働者の退職の自由も同時に制限していますね。
しかし、先ほどもお話ししましたが、労働者の意思に反して強制的に働かせることは重大な法律違反ですので、労働者がどうしても退職したい場合は退職することは実は可能です。
しかし、この場合は、労働者が一方的に契約不履行をすることと同じですので、会社から損害賠償が請求される可能性は十分にあるため、ぜひご注意ください。
就業規則と民法、どっちが優先?
よくあるケースですが、就業規則に「退職は〇ヶ月前に申し入れなければならない」的な内容がありますよね。
しかし、ここまで説明してきたように、正社員の場合は基本的に2週間前に退職の申入れさえすればOKのはずですが、就業規則の規定と民法の規定のどちらが優先的に適用されるのでしょうか。
端的にいうと、民法の規定が優先的に適用されます。
それはなぜかといいますと、就業規則はあくまでも会社内でしか通用しない社内規則であり、法律の規定に抵触がある場合は法律が優先されるからです。
前述のように、一刻でも早く退職したい場合は、就業規則がどうでもいいので、2週間前に伝えれば法的に問題はないでしょう。
しかし、そうはいっても、世の中的にはやはり法律だけ守ればOKなわけではなくて、特に円満退職を目指している方にとっては、なるべく退職の切り出しタイミングについて会社と揉め事を起こさないように心がけましょう。
労働基準法にかかわる諸手続き
これまでに、最低の退職の切り出し期間に関する民法の規定を説明してきましたが、実は我々労働者に一番かかわりのある法律はこの労働基準法です。
しかし、労働基準法は労働契約の解除においては、使用者=会社側の解雇の権利を厳しく制限している一方、労働者による契約解除に関する制限はありません。
そのため、退職したい場合に、労働基準法が定める労働者側がやるべき手続きはとくに存在しません。
しかし、労働基準法は我々労働者の権利を守る法律でもあるため、退職の際に自分自身の権利が侵害されているかどうかを一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
なるべく残った有休を全部消化
日本人の有休消化率は先進諸国の中では最低レベルといわれています。
そのため、退職をするときに、未消化の有休が残っているケースが非常に多いようです。
本来有休というのは、労働者の権利ですので、いつ取るのかはまったく労働者の自由判断のはずですが、やはり日本企業ではどうしても有休がとりづらいという空気があるため、なかなか消化できません。
しかし、有休が残ったままの状態で退職するのは損した気分になりませんか。
退職のときの有休申請(厳密にいうと申請ではなく、「有休をとりますー」ということを会社に報告すること)は、会社が拒否することはできませんので、正々堂々に有休を申請しましょう。
会社が有休申請を断ったら?
世の中に、やはり社員の有休申請を容認してあげない会社はあります(ほとんどがブラック企業です)。
ブラック企業であっても円満退職を望みたい方はこの一章を飛ばしても構わないのですが、やはり戦いたいという方にブラック企業との戦い方を教えます。
先ほどもお話ししましたが、有給は労働者としての権利のため、本来ならば会社の承認はいらないはずです。 うさらに会社が有休を承認してくれないときによく使われる言い訳の「時季変更権」もまた、退職を前提とするなら使えません。
そのため、会社と戦いたいなら、会社の承認が下りるかどうかにかかわらず、自分が申告した有休時期に休んでもよいです。
そのときに要注意なのは、メールもしくは「内容証明郵便」など、書面の記録が残れるような手段で、会社に「有休をとりますー」と伝えてください。
その次に、次の給料日に有休をとった分のお給料がもらえているかどうかを確認してください。
もしちゃんと有休分のお給料をもらっていれば、それはそれでよいのですが、もらっていなければ、それは立派な給料未払い問題です。
給料未払い問題は、単純に有休を休んでくれない問題よりもはるかに深刻な問題ですので、労働基準監督署でも裁判所でも取り上げられやすいです。
なるべく現職の会社に迷惑をかけたいなら直ちに裁判を起こしてもよいですし、そんなにハードな戦い方でなくてもよければ、労働基準監督署に申告したほうが有効でしょう。
いずれにしても、有休は労働者としての権利ですので、なるべく退職する前に消化しておいたほうがよいでしょう。
退職にかかわる書類の取得
一回転職したことのある方はすでにお分かり分かりでしょうが、はじめての転職の方は、退職にかかわる各書類の取得をお忘れなく。
具体的にどのような書類があるかをみていきましょう。
書類名称 | 使い道 |
---|---|
雇用保険被保険者証 | 転職先に提出する必要があるため必ずもらってください |
離職票 | これも転職先に提出しなければならないためお忘れなく |
年金手帳 | 会社で保管している場合はもらってください |
健康保険資格喪失証明書 | 転職先が決まっていない時に、国民健康保険に切りけるために必要 |
源泉徴収票 | 転職先で年末調整を行う際に必要 |
これらの書類のもらい方は会社によって違いますので、退職する時に必ず人事に確認してください。
まとめ
退職にかかわる法的手続きは実はたくさんあります。
面倒くさいと思っている方もたくさんいますが、後々の会社とのもめ事を避けるという意味では、一つ一つの手続きをきちんと行うように心がけましょう。
円満退職はもちろんよいですが、どうしても会社と話が噛み合わなければ、むりやりに自分の意思を犠牲にする必要もありません。
そのときに、法律を武器に会社と戦うという方法もあります。
いずれにしても、退職することは労働者として当然の自由ですし、法律をちゃんと守っていれば問題はないでしょう。